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完熟ぎりぎりの状態で収穫。気候に左右されず安定供給できるヤンマー研究施設産のトマトとイチゴ

野菜

近年、スーパーの青果売り場では例年の1.5~2倍の価格で野菜が並ぶことがあり、ニュースでも「家計・飲食店に打撃!」などと取り上げられる機会もしばしば。この価格高騰には、台風や天候不良の影響で生育が遅れたり、収穫量が減ったりすることが大きく影響しています。

安定しておいしい野菜や果物を適正価格で手に入れたい…そのような私たちの願いを叶えるキーワードの一つが「施設園芸」。岡山県にあるヤンマーの研究拠点のひとつ、バイオイノベーションセンター倉敷ラボでは、最先端技術を活かした施設を使い、高品質のトマトやイチゴを安定して供給することを目指しています。

トマトやイチゴをコンピュータ制御で栽培?!

バイオイノベーションセンター(以下、BIC)倉敷ラボは、時代や地域で変化するさまざまな環境に対する“植物(作物)の反応”を解明し、おいしさ・収量・安全性・持続可能性を高める農業生産技術の実用化を目的とするヤンマーの研究機関です。

BIC倉敷ラボには、温室6棟と小さな要素試験用のハウスが5棟あり、時間・温度・日射量などを考慮して、植物にとって最適な環境となるようにコンピュータ制御で空調管理を行います。ただし、品質を揃えるための作業(摘葉、摘芽、摘花、摘果)など、細やかな判断が必要で複雑な作業は人の手で行っています。

現在は、大玉トマトの「CF桃太郎はるか」、「冠美」、「ハウスパルト」と中玉トマトの「フルティカ」、イチゴは「紅ほっぺ」と「よつぼし」を栽培中(2018年2月現在)。BIC倉敷ラボの技術を活かすことで、出荷直前まで栄養を吸収させた“完熟ぎりぎりの状態”でお届けできるため、トマトやイチゴ本来の味を楽しんでいただけます。また、雨露の被害を受けず見た目の良い状態で安定出荷できることから、多くのお客様に喜ばれています。

通常の約6倍!30段以上にぐんぐん育つトマトたち

トマトの収益性を高めるうえで重要なのが、トマトを上へ上へと高く成長させる「段」という視点。これは、苗を植えて花が咲き最初に成ったトマトが1段目となり、脇芽を取りながら幹を上に伸ばし、2段目、3段目…と、1本の苗から採れるトマトを増やせば増やすほど、収量を上げることができる栽培方法です。

一般的なハウス栽培は、人の手が届く5~6段くらいが主流。しかし、BIC倉敷ラボでは軒高の高いハウスを採用し、かつ高所作業車で作業ができることから、30段以上のトマト栽培が可能になりました。作物にとって快適でぐんぐん成長できる環境を準備してあげることで、収量もアップ。一度植えた苗で8~10ヵ月もの間トマトを収穫し続けることができ、床面積当たりの収益が高いことが、この多段栽培の大きなメリットです。

BIC倉敷ラボでは、スペイン製のハウスを採用しています。背の高いハウスでは上部に溜まった熱い空気も天窓をあけることでサッと換気ができ、作物への熱の影響を減らすことが可能に。ヨーロッパでは主流となっているこのハウスは、屋根を支える骨材の本数が少なくハウス内に入る光量が増え光合成量が増加します。全体を覆う2重構造のフィルム間に空気の層を作って断熱性も高まり、作物がおいしく育つうえで良いことずくめなのです。

※熱供給源は、ヤンマーオリジナル商品であるGHP(ガスヒートポンプ)エアコンを採用。
※このハウスはヤンマーグリーンシステム(株)の商品として販売しています。

イチゴを乗せたベンチが動くから栽培がラクに

イチゴは単価が高くあるものの、収穫までにかかる手間や時間が他の作物と比較しても格段に多く、肉体的にハードな作物と言われています。さらには生産者の高齢化や人材不足も相まって、もっと作業をラクにしつつ、収穫量も上がる栽培装置の開発が求められていました。そこでヤンマーは、イチゴを載せたベンチがハウス内を自動で循環する「イチゴ移動栽培装置」を開発。なんと、作業者の前にイチゴが動いてきてくれるのです。

「イチゴ移動栽培装置」の導入によって、大きく3つのメリットがありました。それは、①植え付け、栽培管理、収穫などの作業を定位置でできるため、重い道具を持ってハウス内を動き回る必要がなくなったこと、②作業スペースが1か所だけなので植えられる本数が増え、収量アップが期待できること、③ムラなく薬剤散布ができ、防除システムが作業スペースの反対側にあるため、薬剤が人へかかりにくくなることです。このようにして、ご高齢の方や体の不自由な方もラクラク作業ができるようになったのです。

※「イチゴ移動栽培装置」は、ヤンマーグリーンシステム(株)が開発し、販売しています。
※障がいのある人が力を発揮できる社会を目指して設立したヤンマーシンビオシス(株)が、このシステムを活用して栽培・販売を行っています。

現在、BIC倉敷ラボ産のトマト「CF桃太郎はるか」はヤンマートマトドレッシングソース 塩やトマトドレッシングソース バジルの原材料に、イチゴの「紅ほっぺ」と「よつぼし」はフルーツソース ストロベリーにたっぷりと使用されています。今後、新たなオリジナル商品の開発も予定していますので、ぜひご期待ください。

おいしい野菜や果物をいつでも適正価格で手に入れたいという消費者の要望に応えるには、自然環境に左右されないハウス栽培技術や、移動栽培装置のような画期的なイノベーションが欠かせません。完熟ぎりぎりの状態で収穫されるトマト・イチゴのおいしさを、ぜひみなさんも一度味わってみてください。

BIC倉敷ラボや滋賀県栗東市のヤンマーが持つファームで育った作物は、ヤンマーシンビオシス(株)のスタッフが育てていることから「ヤンマー畑」と呼んでいます。このBIC倉敷ラボ「ヤンマー畑」で育ったトマト・イチゴは社員食堂「プレマルオーサカ」でもお召し上がりいただけますので、ぜひ一度味わってみてください。

※天候や栽培状況などにより入荷しない場合もあります。予めご了承くださいませ。
※2021年7月現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、「プレマルオーサカ」は休業しております。

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